純粋すぎるが故にひどく心に突き刺さる。人が生きるために必要なものは…愛です。愛なしに生きれないのです。すでに読んだことある人&ちょっと気になってる人向けレポ。
こんにちは、最近何かと衝動で動くかーぎです。この漫画も衝動で立ち寄った本屋でふと目に入って衝動で購入しました。
萩尾望都というとそれはもう、ものすごく有名な1900年代後半を代表する少女漫画家です。「11人いる!」を以前読んだことがあるのですが、最も脚光を浴びた「ポーの一族」もいつか読みたいところ…。
中世的で美しい作画、吸い込まれそうになる瞳とやんちゃな表情変化のギャップが魅力的な漫画家さんです。
本編の感想いきましょう。以下ネタバレあります。たぶん。
舞台はドイツの男子校。マジメでお手本学生のようなユーリと相棒のオスカー。ユーリに恋心を抱きながら突如謎の死を遂げたトーマとトーマの顔と瓜二つな転校生のエーリス。恋の相関図を描くとあちこちに矢印が行き交うかな〜り泥沼な学園。
優等生演じるユーリ、素直で言いたいことははっきり言うエーリスの2人を中心に物語は展開します。それぞれ辛い過去を背負い、それでも自分の思う理想の生き方を目指すが本当の心は…?
ある事件で心を閉ざしていたユーリは果たして再び愛を思い出すのか。深くユーリを愛していたのに、トーマは何を思って死んでいったのか──。
読み応えたっぷり、一冊通してやっと、この物語の思いが胸にずーーーんと存在感を持ち始めます。正直かなり重め暗めです。このシリアスさが余計にテーマに重みを持たせてくれるのでしょうね。
萩尾望都は友情とか愛情、恋心、親子愛、その中での葛藤といった人間の感情をドラマティックに描く少女漫画家。THE・少女漫画家〜って思っちゃうような題材ですが、読んでみるとあら、全然様子が違う。よくある少女漫画と違うこの雰囲気の原因は、そこに男女のしがらみがないことでしょうか。
恋する相手の性別は気にしない…というか作中で触れられる・問題視されることがない、なので純粋な恋心に没頭することができるんです。
私自身結構性差に囚われた考えがあって、彼女だから大人しくしてしなきゃ(本当はいつもうるさいけれど)、彼女だからおしゃれしなきゃ(本当はいつもあまり気にしないけれど)、、、なんて思ってました。それってすごくしんどいし無意味だし自分のためじゃないです。今は反省してます。
最近の世間の動きがどんどん「男女平等」「性からの解放」「個の尊重」に向かっていますから、私も考えを改めて自分らしく生きれるよう日々学んでいるところです。
萩尾望都のこの作品はもう50年ほど前に描かれたものになりますが、今の私たちこそ染み入るものがあるのかもしれません。
そうは言っても可愛い子がちやほやされるとか、お金持ちか秀才が優位に立つとかありますよ。確かに現代と同じようなことが起きるのですが、よく考えればそれ男女の性差関係ないですね。性差関係なく成り立つ感情ですよね。
それに主人公たちが持つ恋心はそんな表面上の魅力に当てられたものではありません。時間をかけて培った信頼や見る目の変化、互いの心を支え合い、辛いことを乗り越えた中などで生まれる恋なので、読者の私も一緒に恋してるような気分になっちゃいます。
それこそ酷い第一印象だったとしても、一度は殺意を持つほど恨んでも、結末はわからないのです。若き学生の青春真っ只中ですから。
それほどに萩尾望都は「トーマの心臓」で愛を描きたかったんですね。
ぼくが背を向けても、打ち消しても
やはりそれがなければ
人は生きていけないと
ぼくもそれを求めていると
人は生まれたばかりは無力で、愛だけを武器に生きる、成長してから愛の存在感は少し減ってしまう。でもあなたは1人では生きられないし、生きてるあなたは1人じゃない。
はっきりとした愛という形でなくとも、人間の関係性の中で生きてる限りそれは愛の糸であり、繋がれた互いどうし輝かせあって人生の道を歩いている。
何か辛いことがあって絶望し遮断しようとする人の元へはきっと、、、、トーマが来てくれるはず。
(2018/8/27)